医療と法をめぐっては、医療紛争・医療訴訟だけではなく、現行医師法の規定と医療現場との摩擦、 責任追及と医療安全のあり方、診療情報の扱い、倫理問題、先端医療の問題など難問が山積しています。 「医療と法ネットワーク」では、医療と法の架け橋となるべく、そして、医療と法の継続的な対話の場となるべく、 できることから着実に歩みを進めてまいりたいと存じます。
 なお、会員用ページでは、「医療と法に関するコラム」「知恵袋(相談コーナー)」「病院経営と法」 「メールマガジン」に加え、 実務に軸足をおいた研究を行うために「ディスカッション・ペーパー」も掲載しています。
本会の活動は、皆様からの会費によって支えられております。本会の趣旨ならびに活動について、 ご支援・ご協力を賜りますよう何卒よろしくお願いいたします。

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研究成果:トラブル相談
トラブル相談15. 当直手当が、外部のアルバイト医師の当直手当の半分以下の金額しかもらえません
キーワード:当直 労基法、労働契約法(労契法)、残業手当、時間外勤務手当(時間外割増手当)、安全配慮義務、均等待遇

トラブル相談14. インフルエンザにタミフルの使用を控えると民事責任を追及されますか
キーワード:公衆衛生、感染症、インフルエンザ、抗ウィルス薬(タミフル)、トリアージ

トラブル相談13. 診察しないで病名を口にするのは民事法的にどうなのでしょうか
キーワード:名誉毀損、名誉回復処分、公共の利害

トラブル相談12. 手術方法が複数ある場合、どこまで説明しなければならないのでしょうか?
キーワード:説明義務、医療水準、インフォームド・コンセント

トラブル相談11. 患者さんが「自殺したい」と言うのですが・・・
キーワード:守秘義務、精神医療、自己決定権、精神保健福祉法、医療倫理

トラブル相談10. 患者のご家族に説明する義務はあるのでしょうか?
キーワード:家族に対する説明、自己決定権、インフォームド・コンセント

トラブル相談9. 退職後のカルテの保存義務は?
キーワード:カルテ、診療録、診療情報、プライバシー、個人情報保護、医師法

トラブル相談8. ガイドラインに沿わない治療法を実施した場合、責任は問われますか?
キーワード:ガイドライン、根拠に基づく医療(EBM)、医療水準

トラブル相談7. 手術中に採取した組織のレントゲン写真を学会発表に利用したいのですが?
キーワード:患者の個人情報、臨床研究に関する倫理指針、インフォームド・コンセント

トラブル相談6. 病院用のPHSを破損した場合、賠償させられますか?
キーワード:労務、不法行為、損害賠償

トラブル相談5. 緊急性のない場合にも医師に応召義務はありますか?
キーワード:応召義務、医師法19条

トラブル相談4. 師長に残業代を支払う必要はあるのでしょうか
キーワード:労務、管理監督者、労働基準法

トラブル相談3. 終末期の患者さんに透析を導入すべきかどうか・・・
キーワード:終末期、透析、高齢者、治療方針、インフォームド・コンセント、最善義務、家族に対する説明、 セカンド・オピニオン

トラブル相談2. 患者が透析治療を要求するのですが・・・ 
キーワード:腎疾患、透析、患者の選択権、治療方針、診療契約

トラブル相談1. 患者が診療費を払ってくれません  
キーワード:医療費支払い拒否、インフォームド・コンセント、診療契約

(会員用メールマガジンにはより詳細な対応について記述しております。)
研究成果:コラム
16.「リスペクト」
 藤本久俊(弁護士)

 最近、医療訴訟の動向に変化が見られるようにな った。平成に入って増加の一途をたどっていた新受 件数(1 年間に提訴される件数)が平成 16 年の 1110 件をピークに、平成 21 年には 733 件、平成 22 年に は 793 件に減少したのである。
 その原因については、(1)医療機関の安全対策が進 んだ、(2)医療機関の患者対応が充実、迅速化した、 (3)患者側弁護士と協力医のネットワークが整い、無 理な案件は事前にスクリーニングされるようにな った、(4)医療現場の過酷な状況と大半の医師の真摯 な姿勢に対する社会の理解が広まった、(5)医療AD R(裁判外紛争解決手続)により、訴訟以外の方法 で医事紛争を解決する「脱訴訟化」の流れが進んだ 等の諸点が指摘されている。
 上記は、いずれも正鵠を得ている。本コラムでは、 そのうち、医療ADR、とりわけ、平成 21 年 1 月 に発足した産科医療補償制度の問題を取り上げて みたい。
 産科においては、分娩に関連して、出生した児が 重度の脳性麻痺を発症する例がある。脳性麻痺児は、 成長しても、その状態が改善することは極めて少な いから、家族の精神的、経済的負担は極めて大きい。 従前、この問題を解決するためには、医療訴訟や示 談交渉、調停等により、損害賠償を求めるほかなか った。しかし、医療訴訟は、専門的知見を要する専 門訴訟である。過失と因果関係が認められるためのハードルは高く、その解決には長期間を要するから、 訴訟によって患者とその家族を迅速に救済するこ とは困難であった。また、訴訟は、各医療従事者の 行為の当否を問うものであって、事故の原因を分析 し、将来の結果発生防止を目的とするものではなく、 医療の発展に資するところが少なかった。 そこで誕生したのが産科医療補償制度である。


 (会員用メールマガジンに掲載のコラムより一部抜粋。会員用サイトでは全文ご覧いただけます。)
 
15.「産業医の難しさと中立性についての雑感」
 上田伸治氏(ユーサイキア株式会社代表取締役、労働衛生コンサルタント、日本産業衛生学会認定指導医)

 産業医という職種をご存知でしょうか。最近では企業のメンタルヘルス対策が大きな関心を得ており、 産業医という言葉を耳にすることが増えました。また、産業医が、休職中の従業員に対する面談に際し、 その言動につき注意を欠いたとして損害賠償請求訴訟が提起され、単独で被告となり敗訴した、 大阪市K協会事件(大阪地裁平成23年10月25日判決)の報道でその存在を知った方もいらっしゃるかもしれません。
 産業医の難しさは立場の取り方の難しさに集約されるのではないかと私は感じています。臨床医であれば、 目の前の患者に最善の治療を行おうという姿勢でいれば「良い医師」との評価を得られるでしょう。 それでも安楽死や尊厳死の問題、医療資源の分配の問題など、倫理的なジレンマを生じる場面もあります。 臨床医がときどき遭遇することが多いのは、患者本人と家族・親戚との価値観の相違によるジレンマです。


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14.「遺伝子・診療情報のシェアリング促進に向けて」
 隅藏康一氏(政策研究大学院大学准教授)

 バイオバンクを構築するためのプロジェクトで収集されたデータは、その後、多くの研究者によって使用されることにより、 医療イノベーションへとつながっていく。この観点からすると、集められたデータは研究者コミュニティにおける共有資源としてシェアされるべきものである。 また、データがクローズドなものとなり客観的な評価の目にさらされない状況下では、医療イノベーションを実現するためにじゅうぶんな質の高いデータが収集されているのかどうかが検証されにくいという理由からも、データはシェアされるのが妥当である。
 簡易なマテリアル・トランスファー契約を結ぶことで、細胞株・ベクターなどの研究マテリアルが研究者から研究者へと渡され、マテリアルを提供した研究者の名前が論文発表時に記載されている。これと同様に、バイオバンクのデータに関しても、簡易にシェアできるような体制づくりが望まれる。  それでは、データのシェアを促進するために、どのような制度を設計すればよいか。本稿では、このことについての試論を述べてみたい。

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13.「日本の臨床試験制度と薬事法」
 川上浩司氏(京都大学医学研究科・薬剤疫学 教授)

 現在の日本の薬事法は、医薬品等を繰り返して製造し、国内において販売・流通させるという製造販売業を規制している。
それゆえ、規制の対象は大学等研究機関ではなく、営利企業(製薬企業)となっている。
薬事法の規定内で、国(厚生労働大臣)からの承認を受けることを目的とした臨床試験は、「治験」とよばれており、 承認後は薬価収載されて国内の医療機関での当該医薬品の使用が可能となる。この場合、治験としての臨床試験の実施、および治験終了後には独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)での審査を経ることになっている。数年前の薬事法改正で、企業のみならず大学病院等の医療機関が医師主導治験としてPMDAに届出と審査を求めることもできるようになった。
 しかしながら、未承認の新規有効成分であっても、薬事法外の医療行為として大学等が狭義(開発型)の「臨床研究」として実施する場合には、遺伝子・細胞治療品目以外は行政への届出や審査は受けない。「臨床研究」として、治験ではなく開発を行った場合のゴールは、先進医療のように特定療養費制度のもとで当該医療施設だけで国からの医療費が受けられるというものになる。この「臨床研究」を実施するためには、臨床研究の倫理指針を遵守する必要はあるが、実施要件にGood Clinical Practice(GCP)は課せられていないために、実施ハードルは低い。そのかわり、得られた臨床データは、科学的品質が担保されているとはみなされず、日本あるいは諸外国の行政当局における医薬品としての承認審査に使用することはできない。

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12.「医療と法と倫理」
 樋口範雄氏(東京大学法学部・大学院法学政治学研究科教授)

 アメリカの医師国家試験の模擬問題に出会って本当に驚いたことがある。
問題は、若い男性が交通事故に遭って救急車で運ばれたが頭部を強打しており、人工呼吸器を付けられたものの、 すべての基準に照らして脳死状態にあるという前提だった。サイフの中から臓器提供カードが発見され、 そこには臓器提供の意思がはっきりと示されていた。
ところが駆けつけた家族は臓器提供を拒絶した。以下の4つのうちどれが正解か。
a. 臓器を取り出して移植する。
b. 患者の鼓動が停止するまで待ってから臓器を取り出す。
c. その家族の反対を封じるために裁判所命令を申し立てる。
d. 家族の希望を受け入れ、臓器提供は行わない。
 アメリカではいずれの州においても法律上、脳死が死と認められており、 臓器移植については自己決定が最重要とされている。言い換えれば、法律的には、 本人の移植の意思が明示されている限り、家族の反対は効果を持たない。したがって、 これが司法試験なら明らかに正解は最初のaである。
 ところが、医療倫理を問うための医師国家試験での正解は最後のdだという。これはいったい何を意味するのか。
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11.「死因不明社会」
 齋藤信雄氏(NTT西日本京都病院名誉院長)

 医師は出生証明書から死亡診断書(死体検案書)まで、人の一生を確定する。医療行為は当然として、 診断書、証明書等によっても人生を左右することもある。 人の社会における権利の始まりと終わりを証明するわけである。医師免許の重さを思わずにはおれない。 死亡診断書は個人の死を法的に確定し、一方では我が国の死因統計の基礎資料となる。 厚労省の死亡診断書記載マニュアルに沿って記載するのであるが、現場では相当の混乱、迷いがある。
 厚労省の発表する平成21年度の死亡統計をみると、114万の国民死亡のうち外因死とされた数が73,598人であった。 その内訳は交通事故死、溺水、転落など不慮の事故が38,000人、自殺が31,000人等である。 同じ年の警察への異状死の届け出は160,858件あった。医療機関から届けられたのは152件であった。 届出死体の10.1%(16,184体)に司法解剖と行政解剖が行われた。検視官の臨場率は20.3%であった。
 それにしても厚労省の最終統計で外因死が7万余ということは、 異状死体として届けられた16万死体の半数以上が解剖も画像検査も行われることなく検案のみにて、 普通の死として処理されたことになる。
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10.「夏の終わり―終末期医療について-」
 丸山英二氏(神戸大学大学院法学研究科教授)

 母は2001年秋に路上で転倒して入院、その後老健施設でリハビリを受けたが、3か月をめどに退所ということで、 2002年2月に介護付老人ホームへ移った。ここは、基本的に介護認定を受けた人が入居の対象となるが、母の場合、 当初は要支援1~2で、食事等の世話は受けるが、日常生活はかなり自立しており、外出も、受付でGPS端末を借り、 一人で手押し車を押して散歩や買物に行っていた。単独の外出は今年3月まで続いていたが、 その少し前からベッドに横になることが多くなり、3月終わりには部屋のトイレに行くのにも、 そしてほどなく、ベッド横のポータブルトイレに座るのにも難渋するようになった。
 5月13日に心筋梗塞で入院(バルーンで冠動脈開通、ステント留置後、6月9日退院)、 6月19日に下血で入院(自然に止血し、同30日退院)、7月8日に誤嚥性肺炎で入院、と入退院を繰り返した。 6月頃から食欲が衰え、看護師・介護福祉士や家族が与える食事ものどを通らなくなった。事あるごとに、 医師・看護師から、母の付添者としての私に対して、終末期医療をどこまで行うかということが問われた。 本人が高齢であり、いつまでも生きられるというものでもないことから、 私は、本人に大きな負担にならないことを第一に、なるべく生命維持を図ってほしいということをお願いした。 心肺停止時における心臓マッサージなどはしないよう求め、人工呼吸器は使用しないことで合意した
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9.「超高齢社会における医療と法の問題について-あるセルフネグレクトの事例から-」
 三浦久幸氏(独立行政法人国立長寿医療研究センター在宅医療支援診療部長 医学博士)

 超高齢社会の中で、独居高齢者や高齢者夫婦の世帯が増えると予想されていますが、最近になり、 身近にセルフネグレクトの方の対応を迫られることが多くなってきました。
セルフネグレクトは日常の体調管理や金銭の管理をしない、 あるいはできないため安全や健康が脅かされる状態ですが、 高齢者では認知症など判断能力の低下をきたす方が多く、また、 この様な方の中には身寄りの無い方もおられるために、 どのように対応して良いのか大変困る事例が少しずつ増えてきているように感じます。
 最近の事例を1つ紹介したいと思います。80歳代の男性、自宅療養中でしたが、 精神疾患か認知症によりセルフネグレクト状態で、市町の担当者、民生委員、 地域包括支援センタースタッフが対応していました。いよいよ自宅での生活が限界と思われる状態となり、 成年後見制度を利用して、福祉施設への保護的入所を進めたいとのスタッフの意向で、私に相談があり、 認知機能評価等を目的とした入院を勧めました。入院に関する本人の同意は必ずしも得られていませんでしたが、 食欲低下等への精査を理由に入院していただきました・・・そのうち、 施設側も退院後の再入所を断りたいという状況となり、すべての判断が主治医一任という形になりました。
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8.「医師と法律家の相互理解に向けて」
 藤田眞幸氏(慶應義塾大学医学部法医学教室・教授)

 医師と法律家が意見を分かち合うための集いが、本会以外にも、いろいろなところで繰り広げられているが、 本質的な相互理解は困難なようである。
 相互理解を目指すとは言うが、こういった場にやって来る医師の多くが望んでいることは、 実は、「法律」を理解することでも、 「医師の仕事」を理解してもらうことでもない。彼らが理解して欲しいのは、「医師の仕事」の「専門性」である。 つまり、「専門的」な仕事として尊重して、黙っておいてもらうにはどうしたらよいかということなのである。
 一方、法律家の意見は、「法律的には、そうはいきませんよ」という話である。  このように、医師は専門家の囲いの中に閉じこもり、法律家も、 その囲いの外をうろつくだけに終わるのはなぜであろうか。 このような集まりでは多くの場合、法律家の間でさえも、意見が分かれるようなテーマを選んで、 医師と法律家の間で真剣な議論をするようなものが少なくない。 もちろん、こういったことについて意見を交わすことも重要であるが、このような複雑な系では、 専門性の囲いの中に議論が引きずりこまれ、医師と法律家の考え方の本質的な違いが見えてこない。
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岡嶋道夫先生(東京医科歯科大学名誉教授)へのインタビュー
 聞き手:医療と法ネットワーク事務局長・木下孝彦(2011年5月17日)

「医療と法ネットッワーク」の賛同者である岡嶋道夫先生(東京医科歯科大学医学部法医学名誉教授)が、 2011年6月3日にご逝去されました。岡嶋先生は、当ネットワークの活動に深い理解と期待を寄せされていました。 謹んでお悔やみを申し上げますと共に、心からご冥福をお祈りいたします。
岡嶋先生が研究されてこられたドイツ医療行政のご研究や今後の医療制度の在り方等について、 5月17日に行いました貴重な インタビュー記事をここに掲載させていただきます。
 
7.「医療トラブルの解決方法を考えよう」 >
 小島崇宏氏(北浜法律事務所・外国法共同事業弁護士・医師)

 医療者は、日常業務において法に直接触れるような機会はほとんどなく、数少ない法との接点はというと、 医療者にとっては厳しいと感じる判決や大野病院事件のような捜査機関の行き過ぎた行為に関する報道くらいでしょう。
 このような報道を見聞きするうちに、医療者は、法に対して不信感を持ち、不安を感じ、萎縮してしまっているのです。  医療者が、患者のことだけを考え医療に専念できるような環境は、患者が安心して医療を受けるためにも重要であり、 医療と法が連携し、そのような環境を作っていく必要があるのではないでしょうか。
 そもそも、医療でのトラブルは、裁判による解決に馴染むのでしょうか。医療は不確実なものであり、 人間の身体も千差万別です。医療者にミスが全くなくとも、すべての患者に良い結果が生じるわけではありません。 このような特徴を持つ医療について、医療者のミスの有無を、 医療の専門家でない裁判所が判断するというのは非常に困難ではないでしょうか。
 (会員用メールマガジンに掲載のコラムより一部抜粋。会員用サイトでは全文ご覧いただけます。)
 
6.「医師の常識と法律家の常識」
 藤田眞幸氏(慶應義塾大学医学部法医学教室・教授)

 医師が期待するような理解を社会がしてくれない理由には、 一般市民や法律家に十分な医学的知識や医学的常識が備わっていないということもあるが、 医師の常識が社会の常識や法律家の常識とは、かなり異なることがあげられる。
 医師の常識の根本は、患者の治療を最優先に考え、そのためには、どんなことを犠牲にしても正しいと思って、 疑わないことにある。それは、医師自身の私生活や健康さえも例外ではない。 問題は、いつもそうやって仕事をしているために、 患者や社会の側も、自分たちの活動にすぐに理解を示し、協力してくれて当然だと思い込んでいる点にある。  たしかに、こういった医師の常識が、社会によって半ば無条件に尊重されてきたからこそ、 医師は医療に専心できてきた面がある。
しかし、一般社会であれば、本来は、念入りな交渉や納得のいく説明が必要なはずの状況でさえも、 もっぱら「人の命を預かっていますので」の一言で、結局は済ませてきたために、 社会的な面では成長していない医師がいるのも事実である。
(会員用メールマガジンに掲載のコラムより一部抜粋。会員用サイトでは全文ご覧いただけます。)
 
5.「法の言葉とその内容」 
     宇田憲司氏(宇田医院院長)

 京都のある医師団体で、医療安全対策や医事紛争の解決支援活動の係りを引き受けてから10数年になる。 医師・医療従事者など医療機関側から経過報告を聞き、患者さん側からの訴えを聞き、 不良な結果が生じたのはいったい何が原因であったのか、また、医師などの判断や行為にどのように過失があったのかなど、 担当した係りとしての判断をあるレベルまでまとめ、他の医師や法律家とも協議のうえ委員会としての結論を出す。 結論をどのように受け取るか否かは、当事者側の問題であるので、決して強制的なものでない。 例えば、採血検査時に注射器の針先が神経にあたり、痛いと声を上げ直ぐに中止されたが、 後々まで神経痛が残り苦痛で手仕事ができない、それなのに、過失がない・落ち度がない、 したがって損害賠償責任も生じない、と判定されても納得できない、となる。 それに、医療機関側も患者さんへの説明や協議にも困る、訴訟になって新聞にでも出れば評判も落ち営業にも差し障る。 相談担当者としては「採血時に過失があったとは認められなかったからです」と説明するが、 よく理解できたとの顔つきではない。
(会員用メールマガジンに掲載のコラムより一部抜粋。会員用サイトでは全文ご覧いただけます。)
 
4.「医療被害者からは見えない法」 
     石川寛敏氏(関西学院大学司法研究科教授・弁護士)

 医療被害者には、守ってくれる法はどこにも見えない。相談窓口も、被害補償の制度も、 事故を解明する役所機関もない。時には、直接の医療機関へ苦情を呈すれば、モンスターペイシエント と怪物視されて排斥の憂き目にあう。しかたなく法を扱っている弁護士を訪ね、法を司る司法機関へ訴えることになる。 新米であろうと熟練になろうと、医療被害者からの相談を受けた経験のない弁護士はいないだろう、 それほど医療被害者が頼るべき法はこの社会には見えない、むしろ法は存在しない。医療界には司法による介入と映るのは、 そのほとんどが医療被害への責任追及であり、その範囲で個別医療の当否が俎上にのぼる。 過去の医療事故に対する責任分配を決めるだけの司法が医療への介入と映るのは、 年間数件の刑事裁判と200件弱の民事裁判の有責判決が医療の部外者からの批判だからであろう。 しかし司法判断はすべて部外者・第三者の判断であるから、全ての社会領域は司法判断を受けることになり、 これは法治国家の宿命でもある。 (会員用メールマガジンに掲載のコラムより一部抜粋。会員用サイトでは全文ご覧いただけます。)
 
3.「災害救援と法」
     種子田護氏(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院・総長)

 医療は国の重要な安全保障であり、国民の健康・生命を守るため不可欠な社会的基盤である。従って医師は、自衛官、 消防士や警察官と同様に社会セーフティーネットワーク作りに深く関わっており、それゆえに国民は安心して経済活動、 社会活動に専念できるのである。医師は、自衛官、消防士や警察官に較べて業務が地味であるため、テレビ向きではない。 それどころか、マスコミの扇動もあってか、むしろ悪役の印象が最近しないでもない。 今度の大震災でも福島県担当部署からの「患者を見捨てて病院職員が逃げていた」との第一報に、 各メディアは真相を確認することもなく待ち構えていたかのように飛びつき、 衆議院議員の災害対策副本部長までもが「けしからん医師発言」を行った。 正確な情報確認なしに現場で働く医療者をおとしめた発言や偏向報道は後に一部訂正されたが、 自らも被災して絶望の極みにあっても懸命に患者を守ろうと努力した病院と院長の名誉を著しく傷つけた。 (会員用メールマガジンに掲載のコラムより一部抜粋。会員用サイトでは全文ご覧いただけます。)
 
2.「医師が法律家を敬遠する理由」
      原田佳明氏(医療法人協仁会小松病院理事・病院長)

 「医師と法律家は話が噛み合わないと言われます。医学と法律は、定義の決まった専門用語で、 日常の様々な事柄を表現します。お互いに理解しあえなかったり、些細な事で誤解を生じたりもします。 言葉の混乱から崩壊した「バベルの塔」のようでもあります。そもそも理系と文系の違いもあります。 論語に「男女七歳にして席を同じくせず」とありますが、理系と文系を選択した十七歳から席を同じくしていないのです。  
 医療制度も司法制度も明治維新以後の近代化に伴い、諸外国から取り入れた制度です。 欧州成文法を移入した法律家の世界は、現実世界を文章法に当て嵌め、 時間をかけ言葉で判断をする世界のように思います。 逆に医師の世界は、日々進化する医学知識と医療技術を目の前の患者に刹那で当て嵌め、 良い結果が出るまで悪戦苦闘を繰り返します。作法や文法や美学が根本で異なるように思います。
(会員用メールマガジンに掲載のコラムより一部抜粋。会員用サイトでは全文ご覧いただけます。)

1.「医療と法のパートナーシップ」
      位田隆一氏(京都大学大学院法学研究科教授 国際生命倫理法)

  「この10年あまり、生命倫理に関わるようになって、医学・生命科学の研究者や医師と触れ合う機会が多い。 しかし、私が法律家としての発言をすると、なかなかわかってもらえないように思う。
医師も研究者も、「法律」とは人を縛るものだと考えているようだ。あれをしてはいけない、これをしてはいけない、 あれをしろ、これをやらなければならない、と命令する。法律以外にもこのごろは「倫理」によっても縛られる。 「法律」って何だ?「倫理」って何だ?医療や研究は人びとを豊かに幸せにするために行っているのに、 なぜこれほどまでに制約されなくてはいけないのか。もっと自分たちを信頼してもらうにはどうしたらいいのか。」
(会員用メールマガジンに掲載のコラムより一部抜粋。会員用サイトでは全文ご覧いただけます。)
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